温故知新で食べてみた

戦前、主に昭和初期の料理本や婦人誌に掲載されたレシピを、
実際に作って食べて昔の日本をプチ体験。
イミテーション料理
唐突ではありますが、今回はちょいと趣を変えまして、
新企画(?)でございます。

題して

「温故知新で食べてみた」ならぬ

「温故知新で食べてみて」。


私nawomayoは
積極的に口にしないものはありますが、
絶対食べられないというものはほとんどありません。
昆虫でもなんでも、機会があれば食べてやらないでもないぐらいの
心意気で毎日暮らしております。

が、ひとつだけ。
今まで口にしたこともなく、
できればこの先もずっと口にしたくないものがあります。


それは、馬肉。


動物が大好きで、なかでも馬は子どもの頃からひときわ大好き。
好きが高じて最近はたま〜にですが、
競馬を見に行ったりもします。
競馬という競技の魅力や博打の面白さもありますが、
なにより馬が格好良く走る様に見惚れてしまい、
競馬場に足を運んでいます。

そんな見目麗しき馬の肉ですから、
どうにもこうにも食べられない。
いくら美味いといわれてもいくら滋養があるといわれても、
本当に箸が伸びません。


・・・で。
ここでご紹介したい料理があるのですが、
それがまさしく馬肉料理。
作って食べる気にはまーったくなれないのですが、
是非みなさまに紹介いたしたく、
今回は「食べてみた」ならぬ
「食べてみて」と、いうことで、
ひとつ、よろしく。


出典は『主婦之友』昭和十一年三月号の特集、
「美味★経済★栄養 三拍子揃ったイミテーション料理」。
サブタイトルは「高級料理と見分けのつかぬ模倣(イミテーション)の経済料理です」。
監修は東京料理学校講師 上島いわ子先生。

ここではイミテーション、つまり代用料理として、
鯛の代わりに鱈を使ってのフリッターや酒蒸し、
うなぎの代わりに鰯を使っての蒲焼、
豚肉の代わりに鮫の肉を使ってのフライ、
鶏肉の代わりに兎肉を使っての野菜の包み揚げなど
いろいろなレシピが紹介されているのですが、
なかでも馬肉を使ったメニューを多く載せています。

つらつらと書いてみますと・・・
(「」内は先生のコメント)


(一)ビフテキほどの馬のステーキ
肉をサラダ油、たまねぎ、しょうが、パセリなどに数時間漬け、バターで焼く。
「馬肉と聞かされなければ、外見も味もビフテキと少しも変わりません。
牛肉よりむしろ軟かですから、食べよいくらゐです」


(二)トンカツ代わりの馬肉のカツレツ
塩、こしょう、しょうがの薄切りをふりこみ、カツレツにする。
「相當(そうとう)のレストランなどでも、カツには馬肉が多く使はれてゐるようですが、
料理としてしまふと、全く豚肉か何かわかりません」
「揚がつたらすぐ食卓へ出すやうにします。冷めると幾分、肉の臭みが出てきますから」


(三)牛肉代わりの馬肉のてりやき
しょうゆ、みりん、しょうがの薄切り、にんにくに1時間ほど漬け、網焼き。
「醤油の焦げる香ばしい匂ひと、肉汁の美味しさうな匂ひが、食べぬ先から
食慾をそそります。てりのいい方を上にして、お皿に盛り、あつさりと酢どり生姜でも
添へますと、何のてり焼きかわからないで、とても上等の料理に見えます。
 肉は牛肉(ぎゅう)や豚肉(ぶた)よりも軟かで、味はむしろこの方がいいくらゐです。
勿論、お客様に差上げても恥しくありません。
 お辨當(べんとう)のお菜(かず)などには理想的です。これで一人前七八銭くらゐ」


(四)味自慢の馬肉の味噌漬
味噌にみりん、さとうを少し混ぜ(しょうがの搾り汁を入れるとなおよし)、
半日から一日漬け込んで網焼き。
「馬肉と味噌とは、よくお味が合ひますし、おまけに、とても肉が軟かくなりますから、
齒の惡いお老人(としより)にも、これならきっと喜ばれます。
 寒いときなら、一週間でも十日でも保ちますから、重寶(ちょうほう)です。
默(だま)って出せば、どなたでも牛肉の味噌漬としかお思ひにならないでせう。
 てり焼きよりも、お味の點(てん)ではこの方が勝(かち)です。
一人前やはり七八銭くらゐ」


たいへんに馬肉をプッシュしております。


『日本食肉文化史』(伊藤研一・著 平成三年九月発行)によると
この頃はどうも牛肉の消費量に対して
国内での牛肉の生産量が追いついていなかった模様。
不足分は朝鮮からの生牛移入や青島、オーストラリア、カナダなどからの
輸入で補っていたようです。
加えて当時はまだ牛肉は高価な食材。

それらの理由から、比較的安くて手に入りやすかった馬肉は
牛肉の代用として食されていたようで、
上島先生もそれを踏まえて馬肉のレシピを多く考案されたのかもしれませんね。


馬肉が食べられるという方はぜひこれらの料理にチャレンジしてみては。


ちなみに私がもし馬肉が平気であれば作ってみたかったなあと思ったのは
(一)のステーキ。
パセリと漬け込んだらどんな風味のステーキになったのかしらん。


余談ですが、馬の肉について調べていたら面白い話が見つかりました。
『馬を食う』(植竹伸太郎・著)によると、
長野県岡谷市にあった、とある製糸工場寮のメニューが残されており、
それによると馬肉が年1〜2回出されていたそうですが、
これが土用丑の日に出されていたとのこと。

最近では土用丑の日といえばウナギだけど、
庶民がウナギを食べられるようになったのは最近のこと、
つまり養殖でウナギが手に入りやすくなったためだそうで、
それまでは「う」のつく食物で精のつくものなら何でもよかったそうです。
馬はぜいたくな方で、多くの地方ではウサギを食べ、
貧しい農民はウリを食していたそうな。

と、いうことで、
本日、土用丑の日ですが、nawomayoは
実家から送られてきた北海道・むかわ産のウリを食べて
精をつけるとします。




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蓮根のハンバーグ・ステーキ
動画「温故知新で食べてみた ♯1がんもどきのカレー煮」
好評公開中!

http://www.youtube.com/watch?v=egN8cdnu75k
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7988039



115
監修:服部式料理研究所所長 服部品子先生
婦人倶楽部 昭和八年九月号附録 『誰にも簡単に出来る家庭西洋料理全集』より


先日テレビでお菓子メーカーとハンバーグ店のコラボ商品の紹介が流れてました。
チョコレートのソースでハンバーグステーキをいただくという
バレンタイン期間限定のその料理、
メーカーの方は「おきてやぶり」なメニューだと説明してたんですが、
実は昭和八年に、すでにその「おきてやぶり」があったのでありますよ。

その「おきてやぶり」の料理とは
簡単に言うと「チョコ煮込みハンバーグ」。

牛か豚の挽肉(今回は合挽きを使用)とたまねぎ、しょうが、
玉子、溶かしバター、パン粉、塩、こしょうで作ったネタをバターで焼き、
そこへ出汁、しょうゆ、みりん、板チョコを加えてじっくりと煮込み。
さっと茹でた後バターで炒めた蓮根をハンバーグに乗せ、
メリケン粉を加えてどろりとさせたチョコソースをかければ出来上がり。
仕上げにグリンピースを飾ります。


で、食べてみた。


以前作った「小芋のココア味噌餡」で
チョコと和風調味料の組み合わせにノックアウトされた経験から
今回もそれ相当の覚悟で望んだのですが、意外といけます。

さすがにチョコソースは甘く、少々しつこさを感じましたが、
ハンバーグのしょうがが利いており、クドさが軽減。
蓮根のサクサク感もさっぱり感を演出。

試しにソースのかかっていないハンバーグを食べてみると、
チョコ味はさほど染みておらず、
ココア風味ハンバーグといったところでした。

チョコとハンバーグの味が結構馴染んでいたんだけど、
ネタにバターを入れたからかな。
しかしなんと言っても決め手はしょうが。
これのあるなしで味の重さが大分違うと思います。

今回はミルク味の板チョコを使いましたが、
ビターを使えばもっと大人の味になったかも。
ソースは冷めると甘みがよりクドクド。
温かいうちに食べるのをオススメ・・・

・・・しますが、量はほどほどに。
調子に乗って2個食べたら、食後若干の胸焼けが・・・。


そういやその「ココア味噌」、
作ってる時に経験したことのないような匂いがしたけれど、
今回はあんまり感じられませんでした。
チョコとしょうゆの相性がいいのか。
それとも数々の和洋折衷料理をこなしてるうちに
私の嗅覚が慣れてしまったのか。


余談ですが、昭和に入るとチョコレートをより広く普及させようと
各菓子メーカーは個性的なPR合戦を繰り広げていた模様。
例えばこの料理が発表された昭和八年には
森永製菓のタイアップで松竹制作の『沈丁花』という映画が公開になっています。

朝日新聞に連載中だった久米正雄の小説の映画化だった『沈丁花』、
監督や出演者は人気投票で決めるというキャンペーンを
松竹、朝日、森永で大々的に展開したとか。
応募総数は48万通を超えたほどの大反響だったようです。
ちなみに主演は田中絹代、
メガホンは野村芳亭監督(『砂の器』の監督・野村芳太郎の父)が取りました。
この年の松竹映画No.1のヒットになったそうです。

このようなチョコレートブームに触発されて
先生はこの料理を考案されたのかもしれませんね。
それにしても、現代でもチョコハンバーグは話題になるのですから、
当時の読者にはどれだけ奇抜に映ったことやら。

そんなこんなで先生も「美味しいこと請合(うけあひ)」と、
自信を持っておすすめしてるこの料理、
是非今年のバレンタインに作ってみてはいかがでしょう。


と、いうことで、
星2つとまではいかないけど、
星1つというほど悪くはない、ということで


(1.5)



 
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肉団子の山かけ
動画「温故知新で食べてみた ♯1がんもどきのカレー煮」
好評公開中!

http://www.youtube.com/watch?v=egN8cdnu75k
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7988039



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監修:服部式料理研究所長 服部品子先生
婦人倶楽部 昭和八年九月号附録 『誰にも簡単に出来る家庭西洋料理全集』より

これは挽肉、玉子、たまねぎのみじん切り、バター、塩、胡椒、味の素、パン粉を
すり鉢でよく擂って丸め、バターで焼いたものに
擂ったつくね芋、煮出汁、塩、胡椒、味の素、酢を
これまたすり鉢でよくすり合わせたものをかけた料理。
つくね芋が手に入らなかったので、山芋で代用しました。

で、食べてみた。

なかなか乙な味です。
肉団子にとろりとした芋がからむ食感が面白いし、一口サイズなのも食べやすい。
酢を入れたとろろ芋によるさっぱり感が美味しいんだけど、
肉団子の味付けが若干薄くなってしまったので、
ちょっと物足りない味となってしまいました。

また、芋をかける前の肉団子はバターの味がしっかりついてるのに、
芋をかけるとバターの味が消えてしまってもったいない。
バター醤油で焼くと風味もよく、しっかりとした味になったかも。
レシピには「ビールのおつまみにもどうぞ」ともあったので、
肉団子は濃い目の味付けをされるといいと思います。

肉団子ととろろ芋という、このユニークな組み合わせは
現代の食卓でも申し分ないおかずになること請け合い。
みなさんもぜひお試しを。

と、いうことで、
星3つにかなーり近い・・・

★★☆


 
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コーンビーフ辛子味噌和(からしみそあへ)

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料理の友 昭和八年八月号 「避暑地で重宝な缶詰料理」より

これは砂糖・出汁・辛子の入った練り味噌でコンビーフ、茄子、いんげんを和えたもの。
実は私はコンビーフが苦手であまり食べたことがありません。
昔の歌になぞらえて言うと「片手にさえあまる」ぐらいの回数です。
なので、ちょっとドキドキしながら・・・

食べてみた。

・・・ら、美味しいです。
味噌がコンビーフの生臭さを消していて、辛子がピリッと味を締めます。
茄子といんげんの相性もいいですね。
実はこれ、試食した瞬間に「うまい!」と思ったので、翌日バイト先に持ち込み
社員の方々のお昼のおかずにしてもらいました。
ここでも「見事な和洋折衷だね!」とすこぶる好評。
避暑地だけではなく家庭でも重宝される一品ですね。

ちなみに缶詰は元々フランスで軍需用に発明されたものだそうで、
日本でも当初は軍需用、もしくは輸出用として生産されていたそうです。
それが震災の後に一般に広まったとのこと。
この頃の婦人誌では普及を促しているのか頻繁にカニ缶やアスパラ缶の広告が載り、
缶を使った料理の特集も多く組まれているように思います。

余談ですが缶詰の歴史を調べていたら、明治中期に馬肉使用のニセ鶏肉スープ缶や
ニセ牛肉缶詰などが出回って処分されたとのいわゆる「偽装」記事を発見。
ここ最近世間を騒がせてた問題だけに、つい記事に目が止まってしまいました。
どうして歴史は繰り返しちゃうのかしら。

と、いうことで

★★★
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『温故知新で食べてみた』が本になりました


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