温故知新で食べてみた

戦前、主に昭和初期の料理本や婦人誌に掲載されたレシピを、
実際に作って食べて昔の日本をプチ体験。
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コーヒーステーキ
動画「温故知新で食べてみた ♯1がんもどきのカレー煮」
好評公開中!
http://www.youtube.com/watch?v=egN8cdnu75k
http://www.nicovideo.jp/watch/sm7988039


352
監修:大阪マルキ號株式會社
製パン部主任 藤田 諭
主婦之友 昭和四年七月号 「美味しいパンの手輕な作り方七種」より

作り方としては・・・

1.イーストを溫湯(をんたう)少々で溶かしておく。
馬鈴薯を茹で、裏漉しした後、砂糖、薯の茹で汁を入れ、
イーストを加え一次発酵させる。


2.メリケン粉をふるっておく。砂糖と塩を湯で溶かし、
そこへ1と粉を入れ、捏ねて二次発酵させる。


3.ガス抜きしたタネを適宜に切り分け、
麺棒で伸ばし、バタを塗って、
肉桂(シナモン)と砂糖を混ぜたものをふりかける。


4.三つ〜四つに折り(今回は三つ)、
玉子を塗ってテンピで焼く。

・・・という具合です。


で、食べてみた。


コーヒーステーキという名前ですが、
シナモンシュガー味のパンです。
けどでもそのシナモンシュガーの味が薄いです。
レシピには「ぱらり」と振る、とあったので
ほんとに「ぱらり」ぐらいに振りまして・・・。

ただ、現代では薄味に思えても、
まだ当時は今ほどシナモン味に
馴染みはなかったかもしれませんから、
当時の方々からすると、
このぐらいのほのかなシナモンシュガー味でも、
充分に感じることができていたのかも。

こんなふうに甘さもシナモンも控え目ではありますが、
味そのものは素朴で美味しいです。
馬鈴薯でタネを作ってはいますが、
馬鈴薯の風味はちょっと感じられませんでした。

また、少々硬い食感です。
ベーグルほど硬くはないけど、
バターロールのような軟らかさはないです。
20分ほど捏ねてみたのですが、
少量捏ね方が足りなかったかな。

そしてパンの表面に白くついている粉は打ち粉です。
多くつけ過ぎちゃった。

ちなみに使う粉について、
同じ「美味しいパンの手輕な作り方七種」で
食パンの項目を監修している
滿田百二先生は次のように説明しています。
「膨むのは、小麥粉の中に含まれてゐる、
麩素(鳥黐(とりもち)のやうな粘着力の強い成分。)の力でありまして、
麩素の多い粉ほどよく膨んで、よいパンができるのであります。
メリケン粉といひ、饂飩粉というふのも、
みな同じ小麥粉です。」
ここで言う麩素というのはグルテンのことですね。

また、「粉はなるべく麩素の多いものを
用ひなければなりません。」とおっしゃっております。
では、どんな粉が麩素が多いのか。
その見分け方のひとつを次のように説明しています。
「まづ違つた粉を、各同量の目方にして、水を加へ、
よく捏ねて別々に團子(だんご)に作り、
一時間ほどそのままにおいてから、
水の中へその團子を入れ、指先で揉むやうにして
澱粉を洗ひ落とします。
すると後に鳥黐のやうな、ねばねばしたものが殘ります。
それがつまり麩素ですから、そのねばねばが多いほど、
麩素が多いといふことになるのです。」

そして粉の求め方として、
「日罅日本製粉會社などの、一等粉(とうふん)と二等粉とを
混ぜ合せて使ふと、よいパンができます。
近頃は各製粉會社共、家庭用として小袋を賣(うり)出してゐますから、
それをお求めになれば申分(まをしぶん)ありませんが、
饂飩屋で使ふ粉ならば、充分麩素が含まれてゐる筈ですから、
饂飩屋なり、また近くにパン屋があつたら、
パン屋なりで、粉を頒(わ)けて貰へば、好都合と思ひます。」と
おっしゃっています。

さて。現代では一般的な料理やお菓子は薄力粉を使い、
パンは強力粉を使って作る、というのが
広く認識されていると思いますが、
当時は、この文を読む限り、
強力粉は一般発売されて
いなかったのかな、と推測しています。

そこで今回のパンを作るにあたり、
薄力粉で作ってみようか、とも考えましたが、
ここはパン屋さんで
強力粉を分けてもらった、と想定して
強力粉で作ってみました。

この当時からパン作りのレシピが載っていたのは
とても興味深いですね。
粉もさることながら
他の材料を手に入れることは難しかったのでは、と思いますし、
そもそもテンピがないと焼けませんから、
テンピを持っていて尚且つパンを焼けるお宅は
かなり限られていたように思います。
当時の奥様方はこのレシピを見て
パンを焼くハイソでモダンな食卓に
憧れを抱いていたんじゃないのかな。

それにしても、どうして「コーヒーステーキ」っていう
名前なのかしら。


と、いうことで


★★☆
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こんにちは!
不思議な名前のお菓子シリーズまた登場!
ワクワクします〜^ω^


レシピ提供の、大阪マルキ号という会社は、日本にイースト培養を持ちこんだ会社で、しかもその技術を世間に惜しげなく公開したのだそうです(製法技術は門外不出が常識だったそう)。この雑誌のレシピ掲載もその会社理念から出てきたのでしょうね。
このレシピ掲載の翌年昭和5年にパン会社が情報共有する業界団体が創設されたそうで、それもまた興味深いなあ、と思います。
(このリンク記事から。とてもおもしろい記事ですよ)
http://furuse-yukihiro.info/archives/112

じゃがいも入りでふわふわ甘いわけではなく、密度の高い生地なのは、
もともとのレシピがドイツパン系では? と想像しました。

kartoffel brot zimt(ドイツ語のじゃがいも パン シナモン)で見つけたレシピ
http://kaffeeundcupcakes.de/suesses-zimtbrot/
この配合はちょっと甘そう? 今回のコーヒーステーキと比べていかがでしょう?


コーヒーステーキのステーキsteakはスティックstickと通じます(steak はもともと「串・枝stickに刺して焼いた肉」)。スティック状のパンというニュアンスのstick をステーキと聞き違えたか、スティック状に見えないのは「塊loafでなく一人分づつ用につくる」のニュアンスになっていたのかな、と想像します。(ドイツ語のstock brot(スティック パンの画像はまさに串刺し! なんですが。)
https://www.google.co.jp/search?q=stock+brot&espv=2&rlz=1C1MOWC_enJP392JP410&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwjUla2hiYHMAhWF2KYKHS2_D6AQ_AUICCgC&biw=1024&bih=651

アメリカで、coffee cakeはコーヒーとともに供されるパンやケーキのことで、必ずしもコーヒー味でない。(日本の茶菓子が「お茶の味」ではないのと同じですね!)
マルキ号の人はアメリカでパン作りを学んだそうなので、そこから持ち帰ったレシピなんでしょうね。

https://en.wikipedia.org/wiki/Coffee_cake



シナモンは肉桂(ニッキ)の字があてられるように、ニッキと同じ仲間だから、日本人になじまなくはないと思うのですが、当時、ニッキにせよなんにせよ香り付けがどれだけ普及してたのか、どれほどの価格で入手しやすかったのか、気になりますね。

(ぱらり、のニュアンスは、オリジナルレシピがかなりのシナモン量で「うわー、これは日本人にはきついわ、ぱらりでええやろ」というくらいだったのかも。)

長々失礼しました!
毎回レシピから当時の事情やらいろんなことに(勝手に)思いを馳せることができて楽しいです。
これからも無理なく続けてくださいね!
| ここえ | 2016/04/09 4:59 PM |
ここえさん

いつも詳しい情報をありがとうございます!
なるほど、これを見ると確かに
ドイツパンを土台にして作ったパンのように思いますね。
大阪マルキ号の話も興味深いですね。
なるほど、そういう背景があったのですね。
コーヒーステーキのステーキはスティックですか、なるほど。

またいろいろなことを教えてください!
ありがとうございますー!
| 山本直味 | 2016/04/12 6:47 PM |
はじめまして
うろうろしていたら、こちらのブログにたどり着きまして、読ませていただきました。とても興味深いです。以前調理師免許を取得し、調理の仕事もしていましたが、これらはルーツなんですかね。様々な物が外国から入ってきて、色々なものが変わっていく時代。現代のインターネット時代とは違い情報収集の方法が限られていた時代、主婦たちの喜びが伝わってくるような気がしました。また立ち寄らせていただきます。
| ブル | 2016/05/02 8:44 PM |
プルさん

こんばんは。
はじめまして。
コメントをありがとうございます!
はい、洋食などが海外から入ってきて
カオスな時代です。
これらがなにかしらルーツのひとつには
なっているような気はします。

婦人雑誌の投稿欄を見ていると主婦の喜びが、
レシピを見ていると先生方の情熱が、
とても伝わってくるように思います。
もし機会がありましたら
ぜひ当時のレシピもご一読くださいませ。

ではまたおヒマな時にでも
こちらに見にきてくださいませね。
ありがとうございました。
| 山本直味 | 2016/05/02 11:24 PM |









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